[sugj-tech:8021] Re: samba4.8.0:traffic_learner.7.xml の訳について(その1)

KIDA-Akira akida @ gadjp.com
2018年 6月 7日 (木) 12:34:16 JST


きだと申します

> 今の場合、スケール化して記述する、という直訳であったとすると、
> 一所懸命、適訳を目指そうとすると、集約化して記述、抽象化して
> 記述、間引いて記述、汎用化して記述、基準化して記述、などなど
> いくつもの訳例がとりあえずは思いつくのですが、これらすべて
> scale の訳としては正しいと思っています。ただこれを本当に訳出
> しなければならないのか、と考えると、結局は記述するということ
> を言いたいだけの場面であり、スケール化してというのがいわば
> 副詞句的に加わっただけ、と考えているのです。

> ちなみにこの文面での scaled は、すぐ近くにある動詞 summarize
> と同義であるとも解釈しています。

モデルファイルのscaleについて議論が交わされていますが、どうも 技術的な事実を抜きに英文解釈だけで議論が進んでいるように感じますので、
通りすがりの者ではありますが、私見を述べます。

[sugj-tech:8013]より:

> 原文
> The model file summarizes the types of traffic
> ('conversations' between a host and a Samba DC) that
> occur on a network. The model file describes the
> traffic in a way that allows it to be scaled so that
> either more (or fewer) packets get sent, and the
> packets can be sent at a faster (or slower) rate than
> that seen in the network.</para>
>
>> モデルファイルには、ネットワーク上に発生するトラフィック
> の種類(ホストと Samba DC 間の 'やりとり')がまとめられている。
> そのまとめ方として、パケットをより多く(あるいはより少なく)
> 送信したり、実際のネットワーク内に比べてより速く(あるいは
> より遅く)送信したりするような指示が記述される。


日本語として分かりやすい表現にするには、
直訳を避け、意訳を厭うべきではないことに異論はありません。しかし、それによって技術的なウソが発生しては努力の甲斐がありません。

原文の「The model file describes the traffic in a way that allows it to be
scaled」の部分を素直に訳せば、「モデルファイルは、スケールされる(to be scaled)ことを許容 (allows) する形式(way)で
トラフィックを記述しています」となります。

モデルファイル自身に具体的なスケール化について記されているのではなく、モデルファイルに基づいて実際のトラフィックを生成するときに「
スケール可能」であることを述べているのです。
その根拠は、該当のモデルファイルを入力として受け取り、実際のパケットを生成するtraffic_replayコマンドが次のオプションを受け取るからです。

-r|--replay-rate <factor>

Replays the traffic faster by this factor. This option won't affect the
number of conversations (which is based on the traffic model), but the rate
at which the packets are sent will be increased.
-S|--scale-traffic <factor>

Increases the number of conversations by this factor. This option won't
affect the rate at which packets get sent (which is still based on the
traffic model), but it will mean more conversations get replayed.

これらから明らかなように、入力されたモデルファイルを基準として、「--repaly-rateオプション」によってパケットの送信レート、すなわち「
単位時間当たりに送信されるパケットの数」を制御でき、一方「--scale-trafficオプション」によって、送信されるパケットの総数を制御できます。
パケットの送信レートと送信数を独立して制御できると明記されているため、両者のスケーリングに因果関係が無いことも明白です。

なお「rate at which the packets are
sent」の「rate」は、「単位時間当たりに送信されるパケット数」を意味します。言い換えれば、 「一つのパケットの送信を終えてから、
次のパケットの送信を開始するまでの時間」の長短です。

それで結局のところ訳はどうなるのかですが、以下が私案です。かなり意訳が入ってますので、この文が採用されるとは思いませんが、ご参考まで。

モデルファイルには、ネットワーク上で発生するトラフィックの種類(ホストとサンバDC間の「対話」)がまとめられている。
該当ファイルに記述されたトラフィックはスケール可能な形式であるため、ネットワーク上で観察される状態に対して、
送信されるパケット数を増減したり、パケットの送信レートを増減したりできる。



2018年6月7日 10:32 matsuand <michio.matsuyama @ gmail.com>:

> > 何度も指摘するようですが、「traffic_summary.pl」は仕方ない
> > として「traffic-summary」はカタカナにした方が判り易いと思い
> > ます。
>
> 「トラフィックサマリ(traffic-summary)ファイル」という表記に
> 変更します。括弧書きは、原語由来を示すと同時に、"トラフィックサマリ"
> という日本語訳語を「ここで定義しましたよ」という意図を示すものです。
>
>
> > > こちらについては異存ありません。
> >
> > 原文にあった因果関係が訳文に見当たらないのですがそれで構わ
> > ないものなんですかね?
>
> まず個人感情として、なんですかね? という問いかけは、
> 存分な言い方で、ヒトを食った表現に感じますので、
> もう少し互いにリスペクトする言い回しとなるようお願いします。
>
> 因果関係に関しては疑念があります。
> 因果関係がある、ということは、モデルファイルにパケット送信量を
> "多く"記述すると、その結果として、実際にネットワーク内にて
> パケットが通常より"速い"速度で送信されるのですか?
> ("多く" 指定すると "速く" なるのですか?)
>
> このことから因果関係を"意図的に"なくした訳を示しました。
>
>
> > > ということとなって、ある基準の plan に
> > > 小さいところから scale up
> > > 大きいところから scale down
> > >
> > > という感じになるのですね。
> >
> > お絵書きソフトに使い慣れている人だと拡大縮小機能を「スケー
> > リング」と呼ぶので、「スケール」で通じない人でもこの表記なら
> > 通じるかと思って私は「スケーリング」と訳しました。
> > でも世間一般的には scale のもう一つの意味の「(歯の) 汚れを
> > 除去」という用法の方がメジャーみたいですね。お絵書きソフトで
> > も「拡大縮小」ボタンがあったりするので「拡大縮小」でいいかも。
>
> Ribbon さん、しらいさんとも、結局「拡大縮小」と訳すことを
> 望んでおられる、ということですか?(そうではないですよね?)
>
> 私の訳に含めた思いを、前回とは異なる表現で示します。
> 結論から言うと「スケーリング」とか「スケール化」という訳語を
> 持ち出すのは、かえって無用な混乱を招くだけで、訳すべきでは
> ないと思っており、今の文面では、然るべき情報が scale された
> ものとしてモデルファイルに記述されるものであることを意味し、
> つまりそれは「記述される」ということを述べればそれで十分な
> 文章であると思っています。
>
> 少々感覚的な話になりますが、私見として英文には、「なんで
> こんな単語を用いるの? こんな単語を出されたら、えっそれって
> 具体的に何を意味してるの?」というときがあります。そういう
> 時に限って具体的なことが示されていないときがあります。
> Sambaのマニュアル訳をしていても、これまで何度か経験した気が
> します。
>
> 今の場合、スケール化して記述する、という直訳であったとすると、
> 一所懸命、適訳を目指そうとすると、集約化して記述、抽象化して
> 記述、間引いて記述、汎用化して記述、基準化して記述、などなど
> いくつもの訳例がとりあえずは思いつくのですが、これらすべて
> scale の訳としては正しいと思っています。ただこれを本当に訳出
> しなければならないのか、と考えると、結局は記述するということ
> を言いたいだけの場面であり、スケール化してというのがいわば
> 副詞句的に加わっただけ、と考えているのです。
>
> ちなみにこの文面での scaled は、すぐ近くにある動詞 summarize
> と同義であるとも解釈しています。
>
> 種々いかがですか?
>



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紀太 章(きだ あきら)  <akida @ akida.org>


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